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キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャーのレビュー

hijime満足度 93点(100点中)

 


映画『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』予告編 - YouTube

 

キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャーは、キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー の続編でシリーズの2作目である。

下のネタバレゾーンまではなるべくネタバレを抑えつつ書きます。

2014年映画を語る上で外せない一本。

 前作ファースト・アベンジャーの舞台は第二次世界大戦のアメリカとヨーロッパ。

何度も入隊試験に落ちた病弱な青年スティーブ・ロジャースが、超人兵士計画によってキャプテン・アメリカとなり、アメリカ軍の兵士としてナチスの組織ヒドラと対決する。

 

今作ウィンター・ソルジャーの舞台は前作の70年後、現代のアメリカである。
なんで70年も飛んでるかはネタバレになるから言わないけど、とにかく70年経ったんだ、うむ。
キャプテンの外見は超人血清の影響で若いままだが、中身は90歳のおじいちゃん。
今作ではS.H.I.E.L.D.(シールド)という国家組織に属している。

 

本作の魅力はなんといってもアクションの素晴らしさ!
キャプテンは超人血清でパワーアップしているとはいえ、ハルクのように銃弾を無効化したり、車を潰したりはできない。
あくまで「強化された人間」なのだ。(中にはトンデモ描写もあるが…)
なんでもできるわけではなく、無茶をしすぎると死んでしまう良バランスなので、アクションに緊張感が生まれている。
近接戦闘のマスターという設定を生かしたスピードのある打撃と身のこなし、愛用の盾を使った防御や投擲攻撃など、キレのあるアクションがとにかく多い。
前作でもそうだったが、キャプテンの「誰かを守るために戦う」という精神を具現化したような最硬の盾が、攻撃のアシストや武器のような使われ方もするのも面白い。

 敵であるウィンター・ソルジャーもカッコ良い。

ビジュアル的な良さもあるが、肉体やナイフを使った流れるようなアクションが素晴らしい。
腕が機械化されており、キャプテンの必殺技・シールドスローも受け止める。

 

前作がレトロな雰囲気が漂う王道ヒーロー物であったのに対して、今作はどこか喪失感や物悲しい雰囲気が漂う。

前作から70年が経っているため、彼の親しかった戦友はみんな他界している。
かつての恋人も他の男性と結婚し、今では90歳のおばあちゃんになってしまっていたのだ。

 

陰謀によりキャプテンは追われる身となり、自分の所属するS.H.I.E.L.D.までが敵になってしまう。

アベンジャーズのメンバーであるブラック・ウィドウは、今作の数少ない協力者の一人である。

彼女とのやりとりは見ていて非常に微笑ましい物があった。
ウィドウは幾つもの任務をこなしてきた凄腕女スパイであり、男の扱いも手慣れている。
一方、我らがキャプテンは、恋人はいたもののキス止まりであり、童貞である。
そんな対照的な二人が、追手を巻くためにカップルのふりをするのだからさぁ大変。
「もしかしてキスしたことないの?」というウィドウの疑問に対し、
「違うもん!初めてじゃないもん!」とマジに返すキャプテンがかわいい。

 

ここから下の『続き』にはネタバレを含みます。

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今作にはアメリカの社会的メタファーがちりばめられており、政治的な物語となっているのが特徴。

 逃亡しながら真相を探るキャプテンは、S.H.I.E.L.D.のインサイト計画』の全容を知ることとなる。

この計画は「脅威になりそうな敵をスパイ衛星で探知し、飛行空母ヘリキャリアーで先制排除するというもの。
これは、現実のアメリカの無人飛行機(ドローン)がモチーフだと思われる。

さらに彼は、S.H.I.E.L.D.にはかつての敵であるヒドラの残党が潜伏していることを突き止める。
ヒドラはこの70年『安全』を餌にアメリカを徐々に侵食していたのである。
インサイト計画実行を狙うヒドラ、キャプテンはそれを阻止できるのか?というのが後半の展開。
この流れに「アメリカが連合国としてナチス倒したはずなのに、なんだかナチスみたいな方向に進もうとしてね?」という皮肉めいた作りを感じるのは私だけだろうか(笑)
国を守るはずの『盾』がすでに敵に侵食されており、それをもう一つの『盾』を持ったキャプテンが阻止する、という構図は非常に面白い。

 

本作には複数の対立構造があり、それが魅力の一つとなっている。
その対立構造の一つが『安全自由である。
安全を求めれば自由が制限され、自由を求めれば危険の排除が難しくなる。
作中でも天秤にかけられているこの2つは、今まさにアメリカが抱えてる安全保障の問題である。
S.H.I.E.L.D.が目指そうとしたものやキャプテンの反抗は、映画の中だけでとどまる話ではないのだ。

 

この作品の最も中心的な対立構造は『古き時代』『新しい時代』である。
古き英雄であるキャプテン・アメリカというキャラクターは『古き良き自由なアメリカ』そのものである。
変動する新しい時代に一人取り残された『古きアメリカ』は、かつてその身を捧げた国や国民から追われながらも必死の抵抗を続ける。
『あの男』が死の淵にあったキャプテンを救いだすシーンの意味には「人々が忘れかけている『古き良き自由』を、このまま死なせないでほしい」という思いがこめられていたように思える。

 

キャプテンはマーベルの他キャラ達に比べ、さほど強くはない。
だが彼の不屈の精神を砕くことは、敵にとって決して容易ではない。
傷ついても立ち上がるキャプテンに、浮き沈みを繰り返すアメリカの社会を投影し、その再生に希望を見出してる人も多いのではないだろうか。